ホンダ ジョルカブ(スーパーカブも一緒) エンジン製作過程 & 性能測定
今は無きジョルカブ乗りのバイブルであったBlack Pepper氏(http://black-pepper.giorcub.com/)の
HPを
散々見て勉強して、ジョルカブを改造してグランドアクシス100と同等性能にしようと考えていた。
Black Pepper氏のHPが消えてしまい残念ですが、色々と参考にさせて頂き感謝しております。
あれだけの膨大なトライ&エラーのWeb公開ありがとうございました。
沖縄マニアックさん痒いところに手が届くパーツを適価にて販売ありがとうございます。
(株)レセプションさんいつも1円スタート出品ありがとうございます。
自分なりに機械屋&設計屋の視線でジョルカブを製作してみた。
コンセプトは、激安価格で完成する壊れず燃費が良くて通勤メインだが、ちょっとヤンチャも可能な仕様。
仕様
・
ボア径50mm ストローク51mmのロングストロークエンジン 排気量100cc(100.0875cc)
連桿比が49.5mmストロークの3.798から3.686に低下するが、3.5を下回ってないし、
上限回転を12000rpm程度に考えているのでOKとする。
・
アルミ製中華シリンダーピストンキット((株)レセプション扱い) ←精度の良さにビックリしたお薦め品。
・
中華ビッグヘッド(ホンダ純正12Vカム互換のデコンプ仕様 (株)レセプション扱い)
ヘッドはカブ90純正を使う方が結果的に安くて安心 ←詳細は書けないが・・・
・
キタコ製ジョルカブ専用インマニを改造。
・キャブはPB18だがPC20と同等品という不思議キャブ。魅力は凄くコンパクトな作りとチョークがワイヤー式
これをガッツリ加工してキタコ製PC20用アクセルワイヤー使用、チョークは純正をそのまま使用。
■クランクケース加工
純正クランクケースは、50mmボアのシリンダーライナーが入るようにフライスでボーリング加工する。
52mmボアのシリンダーだと、シリンダーライナーが更に大径になりケース側のスタッドボルト部の肉厚が
薄くなり、割れるのが明白である。後述するがヘッドのスキッシュエリアも問題あり。
横型エンジンで末永く乗るならスタンダード圧縮(山盛りハイコンプ使わない)の50mmピストンが限界かと思う。
■シリンダーヘッド加工
左は純正90ヘッド 右は中華ビッグヘッド(未加工の画像)
ジョルカブはカウルからキャブレターが飛び出すのはナンセンスだと思う。
アクセルワイヤーの取り回しも苦労するのでキャブレターを目一杯低くマウントを考える。
中華ビッグヘッドはインマニ取付位置が高いので傾斜バイスで角度を合わせて低く加工する。
左は純正90ヘッド 右は中華ビッグヘッド(未加工の画像)
純正90ヘッドのスキッシュ径は約47.5mm 中華ビッグヘッドの
スキッシュ径は意味もなく大きく、
右上スタッドボルト穴部のヘッドガスケット接触面積が極端に狭い。1mmちょっとだった。
ヘッド面研してスキッシュ径を50mm程度にしてヘッドガスケット接触面積を大幅に増やして
ガスケット抜けを防止する。
今回は0.3mmの面研でスキッシュ径が50.5mmとなった。
ボア径が50mmなので上下からガッチリとガスケットを挟めるはず。
ここも52mmピストンを使いたくない理由である。右の未加工の状態で使えば、すぐに
ガスケット抜け発生するのが明白だ。
インマニ部の切削とヘッド面研を出来る環境にある人は少ないと思う。
その他にも絶対に実施しなくてはいけない事と欠陥がある。欠陥の一部は悪い評価に答えが
ある。ただ、他にも組む前に分かる欠陥がある。使ってから出てくる致命傷的な欠陥もあり。
断っておくが、
その評価は自分ではない。激安の購入価格を考えたらリスクも一緒に購入して
いるので、いちいち文句は言わない。考え方は人それぞれだが、それが中華パーツ買う心得。
だから、自分で加工出来ない人は素直に純正90のヘッドをお薦めする。
自分みたいに加工出来ても、追加購入した純正部品の代金と加工費を合計すると・・・
中古で程度の良い純正90ヘッドをヤフオク
相場の16000円で買うのとトントンっである。
自分みたいに仕様変更の節目毎にヘッドを降ろして分解してないと、ダメな部位に気が付かないで
調子悪くなっていると
思う。ていうか通勤仕様でもエンジンブローすると思う。
この中華ヘッド(ホンダ純正12Vカム互換のデコンプ仕様)は、相当数販売されたが皆さん
どうやって使っているんだろう?(笑
■駆動系加工(クラッチ ミッション)
自動遠心クラッチの滑り対策
小径タイヤのジョルカブの宿命である4速吹け切り対策
レベル高く組んであるエンジンだと、二次減速比は皆さんお約束の最大値Fを16丁 Rを31丁でも
吹け切るみたいなので一次減速比を17:69から19:67に変更する。
社外品の強化クラッチ(中華クラッチ)を使うと、純正のプライマリドライブギヤ19丁とドライブギア
アウターとクラッチセンターが使えないので、クラッチ部品は全て純正で組むことになる。
クラッチ滑りを防止する為に
遠心ウエイトを4枚から8枚に変更する。ドライブプレートを加工するが、
一次クラッチは10000回転超えクランク直結だから回転バランスが非常に大事である。
回転バランス悪いとクランクベアリング逝くし、クランク折れるし、デメリットばかり。
フライスにインデックス取り付けて同軸度をゼロにして精密に90度位相で遠心ウエイトの
ポケットを拡大加工した。
ホンダ純正ドライブプレート 遠心ウエイト8×4=32枚仕様完成 右は50ccノーマル品
これに沖縄マニアックの強化スプリングと純正フリクションディスクを組んでクラッチASSY完成。
4輪用OILカストロRS入れても全くクラッチが滑らないでシフトアップでフロントがポンポン上がる
クラッチシステム完成。
極圧添加剤ごときで滑るクラッチというのがナンセンスだと思っている。
シフト踏力も問題なくスムーズに走る。50ccと同じ踏力ではないのは誰でも分かると思うが・・・
一般的に流通している古いサービスマニュアルに記載あるクラッチ調整法と、内容が正反対な
誤記訂正版の調整法は両方ともダメだね。まともな調整が出来ないで重い踏力に悩むと思う。
上手に文章化するのは難しい部位である。
当然だがプライマリドリブンギヤも69丁から67丁に歯数が変更となり新品購入。
69丁だがJUNから薄く加工して軽量化したプライマリドリブンギヤがあるが歯厚まで薄いのはナンセンス。
原付ユーザーが購入出来るように加工コストを抑えたいのは理解出来るが・・・ 自分が製作する物は
『コストが上がってもちゃんとした製品』の極少数派の方です。
加工工賃が一気にハネ上がるが、歯厚と強度は純正値を確保しつつ軽量化してみた。
旋盤を使いつつ、肉抜き穴は精密に60度位相とする為にフライス+インデックスを使ったので、
まともに計算すると軽く万円超えコースの加工工賃である。
JUNの極薄プライマリドリブンギヤより軽量化されて強度も確保されている物が完成。
主に外周部の肉抜きなので強度を落とさず回転イナーシャも下げられるのでフィーリングは良くなる。
プライマリドリブンギヤ67丁は新品でしか入手出来ないから失敗は許されず加工は緊張した。
69丁はヤフオクで腐るほどあるけどね。
参考までに直径が大きい69丁で製作した軽量品は569g 純正品は687g 差は118g
左が67丁軽量加工品 右が69丁純正品
純正4速ミッションの1速ギア比がローギアで2速への繋がりが悪い対策。
単純にタイカブ4速ミッションのギア比にした。
沖縄マニアックで1次クラッチ用4速ミッションASSYと関連部品を購入。
こちらは出品説明文でもあるが、そのまま組めない。4速ギアのボスの高さがちがうので
4速ギアがクランクケースを削ってしまう。下記1枚目画像左がジョルカブ純正4速ギア 右が新規に
購入したミッションASSYの4速ギア。下記の2枚目画像でBrg外側のケース部にうっすらと
円弧状の
跡が見えるがここが削れる所。
3枚目画像のように組んでから4枚目画像のようにシムを入れて4速ギアとケースの接触を避ける。
左はジョルカブ純正4速ギア 右は沖縄マニアック4速ギア
こんな感じで組んで完成したエンジン。勿論だが、ポンプを含めお約束の部品は全て交換してある。
通説(都市伝説?を含む)と違うポイントを列記すると・・・
1) OILはアッパーレベルまで入れている。
2) OIL通路のオリフィスは純正の0.8mmのまんま (キックであれだけOILが出てくりゃ十分)
横型エンジンの弱点であるクランクピンの摩耗を避けたいのでクランクにガンガンOILを回した
あとの飛沫でピストン裏とシリンダー内壁にもOILをガンガン飛ばすべし。
これがピストン裏へのOIL噴射ノズルを持たないエンジンの本当の姿である。
3) スタッドボルトはタイカブのM7ではなく、カブ90の純正品M6を使用 締め付けトルク1.2kg/m
(ハイコンプピストンじゃないので十分なのと上述のようにガスケット面積を得ているからOK)
ナットは他のナットを流用する。
4) オイルクーラーなんて不要 (真夏の昼間に4速9000rpm巡航を3km続けても油温Max120℃)
蛇足だが、エンジンノーマルのシグナス(SE44J)も同じ事をして油温Max120℃である。
普段は真夏で80〜100℃と適温。これはビッグフィンヘッドとビッグフィンアルミシリンダーの
放熱が効いているのかな? 特に冷やす事に気遣いはしていない。
OILは冬〜春はカストロXF-08で、夏場だけカストロRSにしたら油温が下がったのも事実。
4輪でも同じ結果が出る。ターボ車で首都高を走っていたガキの頃に油・水温上昇で困って
久し振りにカストロRSを入れてみたら温度低下して連続走行可能になった。高級OILって
凄いと思い、それ以降はタイム狙いや油温が上がるエンジンにはカストロRSを愛用している。
高いと言ってもホームセンターのセールにて4L缶で約3000円(笑
■ジョルカブtest記録
月日 |
SJ MJ |
CDI | マフラー | キャブ | エアクリ | カムシャフト | 排気量 |
シフトUP 回転数 |
60km/h 到達時間 |
0-50m (sec) |
0-100m (sec) |
0-200m (sec) |
最高速km 回転数 |
気温 Max油温 |
燃費 km/L |
備考 | |
1 |
2013 7/25 |
49 |
8500 (純正指定値) |
20.32 | − | 11.92 | 18.54 |
62 7200 |
26 65 |
− | |||||||
2 |
2013 7/25 |
完 | 全 | ノ | ー | マ | ル | 49 | 9500 | 21.62 | − | 12.08 | 18.91 | − |
26 65 |
− | |
3 |
2013 7/25 |
N | 社外1 |
キャプトン 長バッフル |
N | N | N | 49 | 9500 | 16.99 |
7.7 |
11.53 | 17.74 |
76 8800 |
26 65 |
通勤 40.3 |
純正CDIとマフラーのデチューン凄い! |
4 |
2014 6/14 |
38 85 |
社外1 |
純マフ 芯抜き |
PB18改 | 純正改 |
中華純正 リフト5.5 |
100 | 8500 | − | − | − | 14.50 |
100 8600 |
29 112 |
− | 0-200mで遅過ぎなので他の測定なし |
5 |
2014 6/14 |
38 85 |
社外1 |
純マフ 芯抜き |
PB18改 | 純正改 |
中華純正 リフト5.5 |
100 | 9500 | − | − | − | 14.67 | − |
29 112 |
− | 純正マフラーの糞詰まり感はハンパない |
6 |
2014 6/14 |
38 85 |
社外1 |
純マフ 芯抜き |
PB18改 | 純正改 |
中華純正 リフト5.5 |
100 | 10000 | − | − | − | 14.84 | − |
29 112 |
− | |
7 |
2014 6/14 |
38 85 |
社外1 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
中華純正 リフト5.5 |
100 | 8500 | 8.36 | 5.74 | − | 14.06 |
101 8750 |
29 112 |
− | 1・2速は10000rpmまで惰性で回るが、3速からは9000rpm超えると明らかに苦しい。 |
8 |
2014 6/14 |
38 85 |
社外1 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
中華純正 リフト5.5 |
100 | 9500 | − | − | − | 14.09 | − |
29 112 |
ツーリング 50.0 |
燃費は通勤でコンスタントに45走った |
9 |
2014 6/14 |
38 85 |
社外1 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
中華純正 リフト5.5 |
100 | 10000 | − | − | − | 14.24 | − |
29 112 |
通勤 45.0 |
上の回りが苦しいのが難点なカム |
10 |
2014 7/23 |
38 90 |
社外1 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
武R10D リフト6.5 |
100 | 8500 | 8.0 | − | − | − | − |
29.5 109 |
− | 1・2速は12000rpmまで軽く回るが、3速からは9500rpm超えると若干苦しい が回る。 |
11 |
2014 7/23 |
38 90 |
社外1 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
武R10D リフト6.5 |
100 | 10500 | 7.41 | − | − | 13.74 |
104 9000 |
29.5 109 |
通勤 42.0 |
|
12 |
2014 9/30 |
38 95 |
社外2 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
過激カムD リフト7.0 |
100 | 8500 | 8.27 | − | − | − | − | − | − | 1・2速は12000rpmまで軽く回って、3速も10500rpm迄回る。0-200m向き |
13 |
2014 9/30 |
38 95 |
社外2 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
過激カムD リフト7.0 |
100 | 10500 | 7.61 | − | − | 13.6 |
104 9000 |
23 100 |
通勤 36.0 |
体感スピードR-10Dと変わらない。 アイドリング難 低速トルク無し |
14 |
2014 10/8 |
38 90 |
社外2 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
武R10D リフト6.5 |
100 | 10500 | 7.38 | − | − | − |
104 9000 |
23 100 |
通勤 42.0 |
4速入って最高速に達するタイムは 不思議と過激カムより早い。 |
15 |
2014 12/ |
40 88 |
社外2 |
キャプトン 長バッフル |
PB18改 | 純正改 |
武R10D リフト6.5 |
100 | 10500 |
通勤 45.0 |
キャブジェット変更 燃費伸びた 朝晩は氷点下が多いが普通に走る |
||||||
16 | |||||||||||||||||
17 |
通勤はアップダウンのある山道
全て風防付きでの測定
PB18キャブはPC20相当
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